設立目的を日々の経営に落とし込み、地域に価値が循環する仕組みをつくる
「この第三セクターは、何のために存在しているのですか?」
もしそう聞かれたとき、行政、経営側、現場スタッフ、地域事業者、住民が、それぞれ近い言葉で答えられるでしょうか。
第三セクターについては、出資比率や赤字・黒字、行政と民間の役割などが注目されがちです。
もちろん、組織形態や財務は大切です。
しかし実際の運営では、設立時に掲げた目的が、日々の仕入れ、人員配置、商品開発、情報発信、地域事業者との連携といった具体的な判断につながっているかどうかも重要になります。
私たちは、道の駅や温浴施設、公共施設、第三セクター、指定管理事業などの運営支援やアドバイザー業務を通じて、地域づくりの現場に関わってきました。
そこで感じるのは、第三セクターの力を引き出すには、立派な理念を掲げるだけでなく、その理念を現場で使える『判断基準』へ落とし込むことが欠かせないということです。
この記事では、第三セクターの基本的な意味を整理したうえで、設立目的と日々の経営をどうつなぎ、地域に価値が循環する仕組みへ育てていくのかを考えていきます。
1)第三セクター方式を選ぶ意味は、官民で会社をつくることだけではない
法令上、第三セクターについて一つに定まった概念や定義があるわけではありませんが、日本ではこうした官民共同の事業体を指す言葉として定着しています。
そもそも『セクターとは何か』『セクターの意味は何か』という点では、社会や経済における部門・領域という意味で使われます。
行政などの公共セクターを第一セクター、民間企業を第二セクターとし、その双方が関わる仕組みを第三セクターと呼ぶのが一般的です。
『第3セクター』『三セク』『3セク』という表記も見られますが、意味するところは基本的に同じです。
第三セクターの例としては、
地域交通、観光・交流施設、道の駅、温浴施設、地域商社、地域産品の販売・加工など、
公共的な目的と事業としての継続性の両方が求められる分野があります。
ただ、第三セクター方式の本質は、行政と民間が一緒に法人をつくることそのものではないと私たちは考えています。
行政には、公平性や公共性、住民への説明責任があります。
民間には、事業を継続するための収益性や市場を見る視点、現場で改善を重ねる力があります。
第三セクター方式は、異なる強みを持つ主体が共通の地域課題に向き合い、一つの事業として価値を生み出していくための選択肢です。
だからこそ、設立時に「官民で運営する」という形だけを整えるのではなく、その組織が地域の中で何を担うのかまで明確にしておくことが大切です。
2)第三セクターに多くの期待を載せすぎると、現場の判断が難しくなる
地域のためにつくられる第三セクターには、多くの期待が集まります。
・観光客を増やしたい。
・地域産品を売りたい。
・雇用を生みたい。
・交流人口や関係人口を増やしたい。
・住民サービスを充実させたい。
・地域ブランドも育てたい。
どれも大切な目的です。
一方で、一つの事業にあまりにも多くの政策目的を同時に背負わせると、「まず何を優先するのか」が見えにくくなることがあります。
第三セクターを扱った既存の議論でも、一つの事業へ複数の政策課題を盛り込みすぎることで、
事業そのものの目標設定が複雑になる問題が指摘されています。
例えば、
地域産品の販売を強化したいのであれば、誰の商品をどのような基準で扱うのか、売場でどう魅力を伝えるのか、
生産者へ販売情報をどう返すのかまで考える必要があります。
住民に日常的に利用してほしい施設であれば、観光客向けの企画だけでなく、営業時間、価格、交通、日常的な使いやすさも重要になります。
観光を地域経済へつなげたいのであれば、自施設の来場者数だけでなく、周辺の飲食店や事業者、体験、宿泊などへ人が動く導線も考えなければなりません。
つまり、「地域活性化」という大きな言葉だけでは、現場は今日何を選ぶべきか判断しにくいのです。
大切なのは、複数の目的を捨てることではありません。
それぞれの目的を整理し、今の段階で優先すること、将来的に目指すこと、他の主体と連携して実現することを分けて考えることです。
3)設立目的を『現場で使える言葉』へ翻訳する
第三セクターの目的が明確になったら、次に必要なのは、それを現場の判断へつなげることです。
例えば、
「地域経済を循環させる」という理念を掲げるのであれば、地域産品の取扱比率だけを見るのではなく、
生産者との取引が継続しているか、
新しい商品が生まれているか、
販売データを生産者へ返せているか、
地域内の別の店舗や施設へ利用者を案内できているか…
といった具体的な行動へ落とし込むことができます。
「住民に愛される施設」を目指すのであれば、利用者数だけではなく、
住民が繰り返し利用しているか、
地域の人が企画や運営に関われる余地があるか、
地域の魅力を自分の言葉で紹介したくなる場所になっているか
という見方もできます。
ここで重要になるのが、行政、経営、現場、住民、地域事業者の間で使われる言葉をつなぐことです。
行政が示す政策目的を、現場が日々判断できる言葉へ置き換える。
現場で起きていることを、行政や経営側が判断できる情報へ整理する。
住民や事業者の声を、単なる要望として受け取るのではなく、地域に必要な価値を考える材料として捉える。
私たちは、こうした〈通訳・調整役〉も第三セクターの持続性を支える重要な役割だと考えています。
また、他地域の第三セクターの例を調べることは参考になりますが、目標や指標までそのまま持ち込む必要はありません。
人口構成、産業、交通、観光導線、住民の暮らし、担い手などが違えば、必要な役割も変わります。
成功事例から考え方を学びながら、その地域の声を聞き、
複数の選択肢を整理し、地域自身が選択できる状態をつくる。そこに〈地域ごとの最適解〉があります。
4)第三セクターを、地域に価値が残り続ける仕組みへ
第三セクターの成果は、施設や法人が存在し続けることだけではありません。
・事業を通じて地域の人材が育つ。
・地元事業者の新しい販路や連携が生まれる。
・住民が日常的に利用する場所になる。
・地域外の人との継続的な関係が生まれる。
そして現場の人たちが、自分たちで課題を見つけ、改善を続けられるようになる。
こうした状態が残っていくことも、第三セクターが地域にもたらす大切な価値です。
もちろん、そのためには事業として継続できる収益性が必要です。
同時に、売上だけでは測りにくい公共的な価値もあります。
どちらか一方を選ぶのではなく、「何のために必要な収益なのか」「その収益を地域のどの価値へつなげるのか」を考えることが重要です。
例えば
得られた収益を設備の維持、人材育成、地域産品の磨き上げ、新しいサービスへ再投資できれば、事業の力が次の地域価値へつながります。
さらに、
地域の人たちが「この施設が地域にあって良かった」「自分たちの地域の魅力を紹介したい」と感じられるようになれば、
施設は単なる事業拠点を超え、地域への愛着や誇りを育てる場所にもなっていきます。
私たちが目指しているのは、外部支援者がいつまでも答えを出し続ける状態ではありません。
地域にすでにある人材、知恵、産品、文化、想いを見つけ、それらをつなぎながら、
地域の人たちが自分たちで判断し、改善し、続けていける土台をつくることです。
第三セクターを『地域の受け皿』で終わらせず、
地域に新しい価値を生み出し、その価値が人・モノ・お金・情報として循環していく仕組みへ育てる。
そのためには、組織の形以上に「何のために存在し、日々何を選ぶのか」を共有し続けることが大切ではないでしょうか。
第三セクターの設立・経営改善、公共施設再生、指定管理、道の駅活性化、地域経済循環、官民連携などについて課題を感じている方は、まずは情報交換からお話しできればと思います。
地域ごとの背景や現場の声を大切にしながら、設立目的を実際の運営へつなぎ、その地域に価値が残り続ける仕組みを一緒に考えてまいります。

【自治体の皆様、第三セクター・指定管理事業担当の皆様】
施設運営や地域活性化に関する課題をお持ちの場合は、お気軽にご相談ください。
私たちはコンサルティングだけではなく、研修、人材育成、施設運営支援まで一貫して対応しています。単なる提案だけではなく、現場に入り込みながらハード&ソフトの両面から伴走支援を行っていきます。
各地域に新しい価値を生み出すパートナーとして、皆様と共に取り組んでまいります。
【お問い合わせ】
平日:9:00~18:00
休業:土日祝・夏季・年末年始
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