日帰り温泉施設の経営では、入浴者数や入浴料収入が重要な指標になります。
しかし近年は、人口減少や光熱費・人件費などの上昇により、「入浴者数を増やす」だけでは安定した施設経営が難しくなっています。
こうした中で、
「利用者は来ているのに利益が残らない。」
「光熱費などの経費が上がり、経営が厳しくなっている。」
「入浴料を値上げしたいが、地域住民への影響を考えると難しい。」
といった悩みを抱える温泉施設も少なくありません。
私たちも、日帰り温泉施設の運営支援を行う中で、「どうすれば入浴者数を増やせるか」という相談を多くいただきます。
もちろん、入浴者数を増やすことは重要です。
しかし、温泉施設には、入浴以外にも食事、売店、休憩、イベントなど、さまざまな機能があります。
本質的な課題は、「何人入浴したか」だけではなく、「施設全体でどのように価値と収益を生み出すか」という視点を持てているかということです。
今回は、入浴料だけに頼らない、温泉施設の収益づくりについてご紹介します。
「入浴者数」だけを追いかけない
温泉施設では、「今日何人来たか」「昨年より入浴者数が増えたか」という数字に目が向きがちです。
もちろん、入浴者数は施設経営を考える上で大切な数字です。
しかし、同じ100人が来館したとしても、
入浴だけをして帰る100人と、食事を楽しみ、売店で商品を購入し、館内でゆっくり過ごす100人では、
施設全体の売上は大きく変わります。
だからこそ、「何人来てもらうか」だけではなく、
「来ていただいた方に、施設の中でどんな価値を提供できるか」を考えることが重要です。
入浴料を上げることだけが、収益改善ではありません。
今ある施設やサービスを見直すことで、新しい収益を生み出せる可能性もあるのです。
温泉施設には「入浴以外」の収益をつくる場所がある
温泉施設には、さまざまな収益機会があります。
例えば、
・地域食材を活かした飲食メニューをつくる。
・売店の商品構成や売場を見直す。
・オリジナル商品を開発する。
・宴会や貸室など、既存スペースの利用方法を見直す。
・イベントや体験企画を自主事業として実施する。
・回数券や会員制度など、継続利用につながる仕組みをつくる。
重要なのは、単純に「商品を増やす」「サービスを増やす」ということではありません。
利用者が何を求めているのか。
施設にはどのような強みがあるのか。
地域にはどのような資源があるのか。
それらを考えながら、施設に合った収益の柱を一つずつ育てていくことが大切です。
大きな設備投資をしなくても、今ある売店や飲食、空間の使い方を見直すことから始められる改善もあります。
施設全体で「稼ぐ力」を育てる
公共の温泉施設で「稼ぐ」という言葉を使うと、違和感を持たれる方もいるかもしれません。
しかし、施設が地域に必要なサービスを提供し続けるためには、持続可能な経営が必要です。
収益が生まれれば、設備を修繕することができます。
新しいサービスにも挑戦できます。
スタッフの育成や、利用者へのサービス向上にもつなげることができます。
そして、地域の商品を販売したり、地域事業者と一緒にサービスをつくったりすることで、施設だけではなく地域にも経済効果が生まれます。
つまり、温泉施設が「稼ぐ力」を持つことは、単に施設の売上を増やすためだけではありません。
施設を育て、地域への価値提供を続けていくために必要な力なのです。
今回の温泉施設シリーズでは、
vol 1 「滞在価値を高めること(滞在価値)」
vol 2 「また来たいと思える理由をつくること(リピーター)」
vol 3 「地域とのつながりを育てること(地域連携/ 地域交流)」
についてお伝えしてきました。
これらの取り組みは、それぞれ別のものではありません。
利用者が施設で過ごす時間が増え、また訪れたいと思い、地域の商品やサービスに触れる。
その積み重ねが、結果として施設全体の収益にもつながっていきます。
「入浴料で運営する施設」から、「施設全体で価値と収益を生み出す施設」へ。
まずは入浴者数だけではなく、「一人の利用者が施設でどのように過ごしているのか」を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
施設全体で稼ぐ力を少しずつ育てていくことが、地域に必要とされる温泉施設を将来へ残していくことにつながるのではないでしょうか。

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