道の駅や温泉施設、観光施設などの地域公共施設でも、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を耳にする機会が増えています。
人手不足への対応や業務効率化など、地域公共施設の運営においても、こうしたDXの考え方が求められるようになってきました。
しかし、現場では、
「DXを進めたいが、何から始めれば良いかわからない。」
「日々の業務に追われ、新しい取り組みを考える時間がない。」
「デジタルツールを導入しても、スタッフが使いこなせるか不安。」
といった声もあります。
特に第三セクターや指定管理によって運営される施設では、
限られた人員や予算の中で、日々の施設運営と新しい取り組みを両立させなければならないケースも少なくありません。
こうした状況の中で、DXという言葉だけが先行し、「新しいシステムを導入すること」が目的になっていないでしょうか。
DXで大切なのは、デジタル技術を使うことそのものではありません。
現場の仕事を見直し、スタッフが働きやすく、利用者にとっても使いやすい施設へ改善していくことです。
今回は、地域公共施設でDXを進める際に、まず考えておきたい業務改善の進め方についてご紹介します。
DXは「システムを導入すること」ではない
では、地域公共施設でDXを進めるとは、具体的にどのようなことでしょうか。
例えば、新しいシステムやアプリを導入したり、AIを活用したりすることも、業務改善に役立つ手段の一つです。
しかし、便利なツールを導入しても、これまでの仕事の進め方が変わらなければ、十分な改善効果は得られないかもしれません。
デジタル技術を活用して、現場の負担を減らし、施設運営の仕組みそのものを改善していくことが重要です。
例えば、施設の日常業務を考えてみましょう。
・毎日の売上を紙の日報に記入し、月末に改めてExcelへ入力している。
・スタッフのシフト希望を紙や個別のメッセージで集め、管理者が手作業で勤務表を作成している。
・イベントの案内を紙の掲示物だけで行っている。
こうした業務は、一つひとつを見ると当たり前の仕事かもしれません。
しかし、同じ情報を何度も入力したり、確認や転記に時間をかけたりしているのであれば、改善できる可能性があります。
・売上情報を最初からデータで管理する。
・シフト希望の提出方法を統一し、デジタル上で集約する。
・施設の情報をホームページやSNSでも発信する。
こうした小さな見直しも、デジタル活用を進める第一歩です。
大切なのは、「どのシステムを使うか」よりも、「今の仕事のどこに無駄や負担があるのか」を見つけることではないでしょうか。
まずは現場の業務を「見える化」してみる
公共施設でDXを進める際、最初から大きなシステムを導入する必要はありません。
まず取り組みたいのが、日々の業務を整理することです。
例えば、スタッフが普段行っている仕事を書き出してみます。
・売上や利用者数の集計
・日報や報告書の作成
・スタッフのシフト作成
・発注や在庫の管理
・イベントや商品の情報発信
・利用者からの問い合わせ対応
その上で、それぞれの業務について考えてみます。
「毎日、同じ作業を繰り返していないか。」
「同じ情報を複数の書類へ入力していないか。」
「特定のスタッフしかできない仕事になっていないか。」
「確認や連絡に必要以上の時間がかかっていないか。」
こうして整理すると、普段は気づかなかった業務の負担が見えてくることがあります。
例えば、
売上データの集計に時間がかかっているのであれば、Excelやスプレッドシートの計算機能を活用することで、作業時間を減らせるかもしれません。
シフト作成に負担が集中しているのであれば、希望提出の方法や情報共有の仕組みを見直すことが考えられます。
ただし、すべての業務をデジタル化することが正解とは限りません。
施設の規模やスタッフの人数、業務内容によって、適した方法は異なります。
今の業務を整理し、改善する必要があるところから取り組む。
この順番が、現場に無理のないDXを進めるためには重要です。
小さな業務改善を「施設全体の変化」につなげる
DXを進める上で、もう一つ大切なのが、現場のスタッフと一緒に取り組むことです。
管理者が新しいシステムを導入しても、実際に使うスタッフが必要性を感じていなければ、十分に活用されないことがあります。
操作が難しく、かえって作業が増えてしまう。
一部のスタッフしか使えず、従来の紙の管理も残ってしまう。
こうした状況では、デジタル化が新たな負担になってしまいます。
だからこそ、まずは現場で困っていることを聞き、小さな改善から始めてみることが大切です。
例えば、
毎月の集計作業を一つ簡単にする。
スタッフ間の情報共有を一つの方法にまとめる。
報告書の作成時間を減らす。
そして、改善前と改善後で、どのくらい作業時間や負担が変わったのかを確認してみる。
実際に仕事が楽になったことをスタッフが実感できれば、次の改善にも取り組みやすくなります。
また、業務改善によって生まれた時間を、利用者へのサービスや売場づくり、
地域事業者との連携などに使うことができれば、施設運営そのものの改善にもつながっていきます。
道の駅や温泉施設などの地域公共施設は、
単に施設を維持するだけでなく、地域住民や観光客にサービスを提供し、地域の魅力を伝える役割も担っています。
そのため、DXによる業務効率化は、人件費や作業時間を削減することだけが目的ではありません。
スタッフが本来力を入れるべき仕事に、より多くの時間を使えるようにすること。
これも、地域公共施設におけるDXの大切な役割です。
最初から大きな変化を目指す必要はありません。
まずは、現場で当たり前になっている仕事を一つ見直してみる。
「この作業は、本当に今の方法でなければならないのか。」
そんな問いかけから始めることが、施設全体の業務改善につながる第一歩になるのではないでしょうか。

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